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ドイツ語を学び始めると、「ß」という見慣れない文字に出会います。Straße(通り)や groß(大きい)など、よく使う単語にも出てくるので、ssとどう違うのか、いつ使うのかが気になりますよね。
この記事では、ドイツ語の正書法を定めるドイツ語正書法評議会(Rat für deutsche Rechtschreibung)が公開している公式規則(Amtliches Regelwerk、2016年の改訂を反映し2018年に編集された版)をもとに、ßの使い方を5つのポイントにまとめます。後半の、ßとssを覚えるための練習方法は、この記事の提案です。
※規則は改訂されることがあります。学校や試験で使う場合は、教科書や試験の案内、正書法評議会の公開資料もあわせて確認してください。
ßとはどんな文字か
「エスツェット」と呼ばれる文字
ßは、ドイツ語で「エスツェット(Eszett)」や「シャルフェス・エス(scharfes S)」と呼ばれる文字です。発音は、にごらない「ス」の音で、ssと同じ音を表します。
公式規則のアルファベットに含まれる
正書法評議会の公式規則では、ドイツ語の文字の一覧として、aからzまでの小文字に加えて ä、ö、ü、ß が、大文字では AからZ に加えて Ä、Ö、Ü、ẞ が示されています。並べるときは、ßはssのあとに置く、と説明されています。
大文字の ẞ もある
公式規則の前書きには、2016年の報告にもとづく変更として、大文字の ẞ が認められたことが書かれています。大文字の ẞ は、それまで正式には使われていなかった文字ですが、現在は公式規則の中に位置づけられています。
ßの使い方を知る5つのポイント
1. 長い母音や二重母音のあとはß
公式規則の第25条では、長い母音または二重母音のあとのにごらない「ス」の音は、語幹の中で後ろにほかの子音が続かない場合に ß と書く、と定めています。例として、Maß(寸法)、Straße(通り)、Grieß(セモリナ)、groß(大きい)、grüßen(あいさつする)、außen(外で)、draußen(外で)、heißen(〜という名前である)、beißen(かむ)、Fleiß(勤勉)などが挙げられています。例外として aus(〜から)が示されています。
2. 短い母音のあとはss
公式規則の第2条では、語幹の中で、アクセントのある短い母音のあとに子音が一つだけ続く場合、母音が短いことを子音字を重ねて示す、と定めています。例として Hass(憎しみ)、dass(接続詞の「〜ということ」)、bisschen(少し)、wessen(だれの)などが挙げられています。つまり、短い母音のあとの「ス」の音は ss と書くことになります。
3. 同じ語でもßとssが入れ替わる
第25条の補足(E1)では、語幹によっては、活用や派生で母音の長さが変わり、それに合わせて ß と ss が入れ替わる、と説明されています。例として、fließen(流れる)– er floss(流れた)– Fluss(川)– das Floß(いかだ)、genießen(楽しむ)– er genoss – Genuss(楽しみ)、wissen(知っている)– er weiß – er wusste が挙げられています。
4. ßが使えないときやスイスではss
第25条の補足(E2)では、ß の文字が使えないときは ss と書く、とされています。さらに、スイスではいつでも ss と書くことができる、と書かれています。例として Straße – Strasse が示されています。
5. すべて大文字で書くときはSS、ẞも可
第25条の補足(E3)では、すべて大文字で書くときは SS と書き、それとあわせて大文字の ẞ を使うこともできる、とされています。例として Straße – STRASSE – STRAẞE が挙げられています。
5つのポイントの早見表
| ポイント | 規則の内容 | 例 |
|---|---|---|
| 1 長い母音・二重母音のあと | ß と書く(後ろに子音が続かない場合) | Straße、groß、heißen |
| 2 短い母音のあと | 子音字を重ねて ss | Hass、dass、bisschen |
| 3 入れ替わり | 母音の長さが変わると ß と ss も変わる | fließen – floss – Fluss |
| 4 使えないとき・スイス | ss と書く | Straße – Strasse |
| 5 すべて大文字 | SS、ほかに ẞ も可 | STRASSE、STRAẞE |
この表は、公式規則の第2条と第25条の内容を短くまとめたものです。
公式規則に出てくるßの単語一覧
公式規則の第25条には、ß を使う単語の例がまとめて挙げられています。意味と一緒に表にしておきます(意味は代表的なものです)。
| 単語 | 代表的な意味 | ßの前の音 |
|---|---|---|
| Maß | 寸法、程度 | 長い母音 a |
| Straße | 通り | 長い母音 a |
| Grieß | セモリナ(粗びき粉) | 長い母音 ie |
| Spieß | 串、やり | 長い母音 ie |
| groß | 大きい | 長い母音 o |
| grüßen | あいさつする | 長い母音 ü |
| außen | 外側で | 二重母音 au |
| außer | 〜以外に | 二重母音 au |
| draußen | 外で | 二重母音 au |
| Strauß | 花束 | 二重母音 au |
| beißen | かむ | 二重母音 ei |
| Fleiß | 勤勉 | 二重母音 ei |
| heißen | 〜という名前である | 二重母音 ei |
二重母音のあとでも使う
表を見るとわかるように、au や ei のような二重母音のあとでも ß が使われます。「長い母音だけ」と覚えてしまうと、außen や heißen で迷いやすいので注意しましょう。
ssの例もあわせて覚える
第2条には、ss の例として Hass、dass、bisschen、wessen、Prämisse が挙げられています。ß の単語と ss の単語を左右に並べて書くと、違いが見えやすくなります。声に出して読みながら書くと、母音の長さとつづりの関係が身につきやすくなります。
よく使う単語で確かめてみよう
「通り」はStraße
Straße の「ra」の a は長い母音なので、第25条にしたがって ß と書きます。地図や住所でよく見かける単語なので、最初に覚えておきたい例です。ただし、ß が使えない環境やスイスでは Strasse と書くことができます。
「〜ということ」はdass
接続詞の dass は、第2条の例として挙げられています。短い a のあとなので ss と書きます。よく似た das(定冠詞・関係代名詞など)とは、つづりも意味も別の語です。
「知っている」は形で変わる
wissen(知っている)は、er weiß では ß、er wusste では ss になります。第25条の補足で挙げられている例で、母音の長さが変わると、つづりも変わることがわかります。
「大きい」はgroß
groß の o は長い母音なので ß と書きます。比較級の größer、最上級の größte でも ß が使われます。第26条では、最上級の語尾 -st(e) について、語幹が ß で終わるときは語尾の s を書かないとされ、(groß – größer –) größte が例として示されています。
名前や外来語には注意
固有名詞は公式のつづりが優先
公式規則の前書きでは、名前や地名などの固有名詞には、一般に公式に定められたつづりが使われ、それはいつも規則どおりとは限らない、と説明されています。人名や地名の ß と ss は、規則から判断せず、そのつづりを確認しましょう。
外来語は辞書で確かめる
同じ前書きでは、外来語は外国語のつづりの習慣にしたがうことが多い、とも書かれています。迷ったときは、規則の単語一覧や辞書で確かめるのが確実です。
ßとssを覚えるための練習方法
ここからは、公式規則の内容をもとにした、この記事の提案です。
音の長さを意識して聞く
ß と ss の使い分けは、前の母音が長いか短いかがカギになります。音声つきの教材で単語を聞くときに、母音の長さを意識してみましょう。「長いならß、短いならss」と口に出しながら練習すると覚えやすくなります。
入れ替わる単語をセットで覚える
fließen – floss – Fluss のように、ß と ss が入れ替わる単語は、セットでノートに書いておくと便利です。動詞の過去形を覚えるときに、つづりの変化にも注目しましょう。
キーボードでの入力方法を確かめる
パソコンやスマートフォンで ß を入力する方法を調べておくと、作文や検索のときに困りません。入力できない環境では、規則どおり ss で代用できることも覚えておきましょう。
看板や地図で探してみる
ドイツ語圏の地図や写真を見るときに、Straße などの ß を探してみるのも楽しい練習です。スイスの資料では Strasse と書かれていることもあるので、地域による違いにも気づけます。
ßのよくある質問
ßはssと書いてもいい?
公式規則の第25条の補足では、ß の文字が使えないときは ss と書く、とされています。スイスではいつでも ss と書くことができる、とも書かれています。
大文字の ẞ は使っていい?
第25条の補足(E3)では、すべて大文字で書くときは SS と書き、あわせて大文字の ẞ を使うこともできる、とされています。
dassとdasはどう違う?
dass は接続詞で、第2条の例として ss のつづりが示されています。das は定冠詞などとして使われる別の語です。文の中での役割で見分けましょう。dass のあとには、主語と動詞を含む文が続くのが一般的です。迷ったときは、辞書の例文で確かめてみましょう。
ßの並び順はどこになる?
公式規則の前書きでは、文字を並べるときは ß を ss のあとに置く、と説明されています。辞書で ß を含む単語を探すときの参考になります。
ausはなぜßではない?
第25条では、長い母音や二重母音のあとの「ス」の音を ß と書くとしたうえで、aus を例外として挙げています。
ßの使い方を規則で確かめてドイツ語を書こう
ドイツ語の ß は、長い母音や二重母音のあとのにごらない「ス」の音に使い、短い母音のあとでは ss と書きます。ß が使えないときやスイスでは ss で書くことができ、すべて大文字で書くときは SS のほか、大文字の ẞ も使えます。
単語を覚えるときは、前の母音の長さに耳を傾けながら、ß と ss の違いを確かめてみてください。